官庁関連手続き
1.従業員が入社した場合
税務署
実務
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を最初の給与支払日の前日までに本人が作成し会社に提出しなければなりません。
留意点
- この申告書を基に会社は給与から源泉税を控除します。
後日税務調査が入ったおりに、確認する事になりますのでその他の従業員分と合わせて保管しておくと便利です。 - 源泉税事務の注意点として、従業員が2ヵ所以上のところから給与を受ける場合には、従たる勤務先にはこの申告書を提出できませんので、源泉事務は乙欄を適用する事になります。
- 申告書記入の注意点として、被扶養者はあくまでも、税務上の被扶養者のことで、社会保険関係の被扶養者ではなく、また家族手当を会社が支給する扶養家族でもありません。
実務上この申告書を他の用途の判断基準に活用するケースも考えられますので、続柄・同居別居・年収等、間違いの無いよう且つ漏れなく記入させるようにしなければなりません。
市町村役場
実務
会社が住民税の特別徴収を行っている場合で、今回採用した従業員を特別徴収に切り替える場合に特別徴収への切り替え連絡票を当該市町村に速やかに提出する必要があります。
留意点
次に挙げる従業員は特別徴収に切り替えることができます。
- 当初から普通徴収の納税義務者
- 前事業所を中途退職し、特別徴収の残額が、普通徴収に切り替わった納税義務者
- 前事業所を中途退職し、特別徴収の全額が、普通徴収に切り替わった納税義務者
但し、普通徴収の税額を一部でも支払った場合や、滞納がある場合は、原則的に特別徴収が出来ませんので注意が必要です。
社会保険関係
実務
健康保険・厚生年金保険被扶養者資格取得届、健康保険被扶養者(異動)届を5日以内に作成して、社会保険事務所に提出しなければなりません。
留意点
- 報酬月額は、予定される給与の額で標準報酬月額を決定します。この場合、通勤手当は報酬の中に含まれますので注意が必要です。
- 健康保険被保険者証は、資格取得届を社会保険事務所に提出してから、相当の時間が経過しないと手元に届きません
(社会保険事務所の混雑具合にもよりますが、1週間から10日の時間が必要です)
その間に病気・怪我があり病院等に行く必要がある場合は、会社で、資格取得証明を発行するような配慮も必要でしょう。
公共職業安定所
実務
雇用保険被保険者資格取得届を雇用した日の属する月の翌月10日までに、公共職業安定所に提出しなければなりません。
留意点
- 従業員は、既に雇用保険の被保険者であった場合は雇用保険被保険者証を添付しなければなりません。
- 手続きが完了すると公共職業安定所より、資格喪失・転出・氏名変更届が交付されます。
- 採用した社員が、再就職手当の支給対象者の場合、採用通知書を持参してきますので、該当事項を記入しなければなりません。その後、その従業員から再就職手当受給申請書が提出されますので、必要事項を記入し交付しなければなりません。
- その他に、高齢者・障害者・寡婦等を採用した場合、各種助成金を受けられる事があるので、該当するかどうかの確認が必要です。
2.従業員が退職したとき
税務署
実務
退職所得の受給に関する申告書を退職手当の支払いを受けるときまでに作成しなければなりません。(本人が作成して会社が受領した事で、税務署長に提出したとみなされます)
会社は、退職所得の源泉徴収税額の速算表により、所得税を源泉徴収し、納付しなければなりません。
留意点
- 源泉徴収する税額の計算は次の方法によります。
(退職給与の額―退職所得控除額)×1/2=課税退職所得金額
この方法により算出した課税退職所得金額を退職所得の源泉徴収税額の速算表に当てはめて算出した金額 - 申告書を提出しない場合の源泉徴収税
支払うべき退職手当金等の金額に20%を乗じて計算した金額を源泉徴収しなければなりません。この場合、退職者は退職所得について確定申告をする必要があります。 - 退職所得控除
・通常の退職の場合- 勤続2年以内 80万円
- 勤続2年〜20年 40万円×勤続年数(1年単位に切り上げ)
- 勤続20年超 800万円+70万円×(勤続年数―20年)
- 通常の退職の場合で算出した金額+100万円
- 徴収した源泉所得税
徴収した源泉所得税は、通常の給与の源泉所得税と一緒に納付します。 - 退職給与引当金
退職給与引当金を設定している場合、退職者の前期末退職所得の要支給額を取崩します。
一方、取崩さない場合は全額益金に算入されますので注意が必要です。 - 源泉徴収票の発行
退職所得の源泉徴収票を作成し、1ヶ月以内に当人当てに交付する事になっております。
また、給与所得の源泉徴収票も同様になっております。
都道府県税事務所・市町村役場
A退職給与があり、税金の納入が必要な場合
実務
退職給与を支払って、源泉徴収税が発生する場合、退職給与を支払った月の翌月の10日までに、市町村民税・都道府県民税納入申告書を提出しなければなりません。
留意点
住民税の特別徴収をしている場合に、市町村発行の退職所得に係るん住民税の特別徴収税額表で算出した税金を徴収して、毎月の納付額と合わせて納付します。この時の納付書の裏が納入申告書になっているので必ず記入してから納付しましょう。市町村税と同一用紙になっております。
B住民税の特別徴収をしている場合
実務
給与支払報告特別徴収に係る給与所得者異動届出書を速やかに市町村役場に提出しなければなりません。
留意点
退職時期などにより次のような事務処理になります。
- 1月1日から4月30日迄に退職した場合
退職者からの申し出の有無に関わらず、残りの住民税を一括徴収します。 - 5月に退職した場合
5月分の給与から徴収します。 - 6月1日から12月31日迄に、退職した場合
退職者の了解を得て一括徴収します。了解が得られない場合は、その旨を記載して普通徴収に切り替えます。 - 退職者が再就職先で、特別徴収を希望する場合
必要事項を記載し、再就職先に送付します。
社会保険事務所
実務
健康保険厚生年金保険被保険者資格喪失届を退職した日から、5日以内に社会保険事務所に、健康保険被保険者証を添えて提出しなければなりません。
留意点
退職した社員が引続き、被保険者資格の継続を希望する場合や、現在治療中の疾病の引続き継続する事を希望する場合は次のような手続きが必要になります。
A継続療養(退職後も引続き療養の給付を受けたい場合)
実務
- 健康保険継続療養受給届を資格喪失後10日以内に保険者(社会保険事務所または健康保険組合)に提出します。
- 被保険者証のかわりに健康保険継続療養証明書が交付さます。
留意点
- 被保険者資格を失ったときに、療養の給付を受けていた病気けがについて、引き続いて療養を受けられますが、資格喪失の前日までに、被保険者期間が継続して1年以上無ければ該当しません。(転職転勤が有っても構いませんが1日でも空白が有れば該当しません)
また、療養は被保険者・被扶養者共に受けられますが、被保険者が死亡した事による資格喪失の場合は、被扶養者は給付を受ける事が出来ません。 - 継続療養の給付を受けられる期間は、初診の日から5年間です。
- 継続療養を受けているものが、国民健康保険の被保険者になっても、継続療養が優先します。
- 継続療養証明証は健康保険の資格を再取得したときや、病気やけがが完治したときは速やかに返却しなければなりません。
任意継続
実務
被保険者期間が継続して2ヶ月以上有れば、被保険者の資格を喪失しても引き続き2年間は個人で被保険者資格を継続する事ができます。その場合、資格を喪失した日から、20日以内に被保険者の住所地を所轄する社会保険事務所または、健康保険組合に任意継続被保険者資格取得申請書を提出しなければなりません。
留意点
- 扶養家族がいる場合は被扶養者届を添付しなければなりません。
- 保険給付は一般の被保険者と同様です。
- 保険料は全額(会社が負担していた分も含めて)自己負担になります。また、保険料納期限の(その月に10日)までに納付しないと、その翌日に資格を失いますので注意が必要です。
- 保険料算定の基礎になる、標準報酬月額は、当人の退職時の標準報酬月額もしくは、今まで属していた制度(健康保険・健康保険組合等)の標準報酬月額の平均額のいずれか低い方が適用されます。
- 資格の喪失は2年を経過したとき(55歳以上で退職して任意継続被保険者になった場合は60歳になるまでの期間は資格喪失しません)のほか、健康保険・船員保険の被保険者になった場合や、保険料納付期限までに保険料を納付しなかった場合に資格を失います。
公共職業安定所
実務
雇用保険被保険者資格喪失届・雇用保険被保険者離職証明書(当人が希望する場合)を離職した日の翌日から10日以内に公共職業安定所に提出しなければなりません。
留意点
出勤簿・賃金台帳・の添付が必要です。但し、事務の代理を社会保険労務士が行う場合は添付資料を省略できます。
3.従業員(扶養家族)が病気けがをしたとき
税務署
実務
病気・けがをしても税務上の手続は特にありませんが、そのために障害者になった場合は、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を障害者となってから最初の給与を支払う前日までに再提出するかもしくは既に提出したものを修正しなければなりません。
留意点
- 給与所得者もしくはその扶養家族が障害者になった場合の源泉所得税は、扶養の人数を1人増やして計算し源泉徴収する事になります。
- 給与所得者に疾病見舞金等を会社が支給した場合社会通念上相当額である場合は課税されません。
- 給与所得者が公的な各種手当金・給付金などを受けても、これらのものには課税されません。
社会保険事務所
A傷病手当金を受給する場合
実務
- 業務・通勤災害以外の病気やけがのために療養している事
- 報酬の全部または一部が支払われない事
- 連続した3日間(待機期間)が経過している事
以上の条件を健康保険の被保険者が満たしているときに、請求できます。
留意点
- 請求の方法は健康保険傷病手当金請求書にて、速やかに請求する事になっておりますが、実務上は、出勤簿・賃金台帳の添付資料が必要な事から、療養が完了してからや、1ヶ月単位に請求する事が多いようです。しかしながら、時効が2年間ですので注意しておく必要があります。
- 傷病手当金は、1日単位で計算され、労務不能な日1日につき標準報酬日額の6割(被扶養者がいない人が入院をした場合は4割)が1年6ヶ月の範囲内で支給されます。
支給期間のうち、報酬が支払われているときには、その報酬分を減額して支給される事になります。
B高額な医療を受けた場合
実務
被保険者・被扶養者が診療を受け、1ヶ月の自己負担額・一部負担額が63,600円(低所得者35,400円)を超えたときに、健康保険被保険者高額療養費支給申請書を提出する事により、払い戻しを受ける事が出来ます。
留意点
- 同一被保険者・同一被扶養者の自己負担額及び一部負担金が30,000円(低所得者21,000円)を超えるものが同一月に同じ医療機関ごとに、複数発生したときは、同一世帯内であれば合算できます。
- 同一世帯で1年間の高額療養費の支給回数が4回以上ある場合4回目からは37,200円(低所得者は24,600円)を超える部分が払い戻しを受ける事が出来ます。
- 負担額のの算定は医療機関の請求書等を添付書類にしますが、あくまでも、暦月単位で算定する事になりますので、請求書の金額が負担額となる訳ではありません。
- 高額療養費は健康保険による医療費が対象ですので、差額別途代や歯科の差額材料代は高額療養費の支給対象から除かれます。
C在職中の業務・通勤外の病気やけがで障害が残った場合
実務
厚生年金の被保険者期間中に初診日のある病気やけがで障害基礎年金、障害厚生年金・障害手当金を受けられるようになった場合は、障害給付裁定請求書を最後に勤めた事業所(在職中の場合は現在勤務している)を所轄する社会保険事務所に提出します。
裁定請求書には年金手帳(被保険者証)・戸籍謄本・診断書・レントゲンフィルム・病歴就労状況申立書・公的年金の受給者はその年金証書・生計を維持している配偶者や子がいる場合はそのことを明らかに出来る書類等を添付する必要が有ります。
留意点
- 障害厚生年金は障害基礎年金へ上乗せの形で給付されます。
- 障害基礎年金を受給できる要件は、原則として、次の条件を満たさねばなりません。
- 国民年金(厚生年金の加入者は国民年金の2号被保険者)の被保険者期間に初診日のある病気けがで障害の状態になったこと。
- 障害認定日(初診日から1年6ヶ月経過した日かその間に症状が固定し治ったとされた日)において1級または2級の障害の状態になっていること。
- 国民年金の被保険者期間でない60歳以上65歳未満のの間に初診日のある場合は一定の保険料納付要件を満たしていること。
- B障害基礎年金に該当しない程度の障害でも、厚生年金の障害等級表に該当するときは厚生年金独自の障害厚生年金(3級)または、障害手当金が支給されます。
労働基準監督署
A業務災害に該当する場合
実務
- 労災指定の病院等で療養(無料で)を受けるには、療養補償給付たる療養の給付請求書に必要事項を記入し、事業主の証明を受けた上で、療養を受けようとする病院等を経由して所轄の労働基準監督署長あてに提出しなければなりません。
療養を受ける病院が指定病院以外の場合は、療養の費用を請求することになるので、請求用紙が療養補償給付たる療養の費用請求書になり、事業主及び担当の医師の証明を受けた上で、所轄の労働基準監督署長あてに提出することになります。 - 業務災害で休業し賃金が支払われない場合に休業補修給付支給請求書・休業特別支給金支給申請書に必要事項を記入し、事業主並びに治療を担当した医師の証明を受けて、労働者名簿・出勤簿・賃金台帳のコピーを添付して所轄の労働基準監督署長あてに提出することになります。
留意点
- 業務災害に認定されるには業務起因性と業務遂行性が認められなければなりません。
- 休業保障給付は次の3つの条件が揃ったときに支給されます。
ア:業務災害により療養をしている
イ:その療養のために労働することが出来ない
ウ:労働することが出来ないために賃金を受けていない - 休業保障給付の内容は休業が4日以上に渡る場合に4日目以降の休業について支給され、その額は1日につき給付基礎日額(原則として労働基準法の平均賃金)の60%となっています。
また、賃金を受けていないとは全く賃金を受けていないという外に、通院などにより、所定労働時間の一部休業の場合においても、休業時間について、給付基礎日額と実際の労働に対して、支払われた賃金との差額の60%未満の額しか受けていない場合をいいます。 - 療養(補償)給付の他に休業特別支給金として、給付基礎日額の20%が支給されることになります。
B通勤災害に該当する場合
実務
保険給付の種類は業務災害と同じになっています。
留意点
- 提出する書類は通勤災害用の用紙を使うことになりますが記入方法は一部を除いてほとんど同じになっています。但し、療養の給付の請求書以外いずれも通勤災害に関する事項が添付書類になっておりますので、注意が必要です。
- 休業補償に関しては、業務災害の場合待機期間(最初の3日間)は会社が休業を補償することになりますが、通勤災害であれば、会社に補償する義務はありません。
4.従業員(の配偶者)が出産した場合
税務署
子供を扶養する場合
実務
子供を扶養する場合は給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を提出します。既に提出してある場合は書き加えます。
留意点
- この申告書は会社で保管し、提出された申告書に基づいて給与等の源泉徴収を実施します。
- 出産祝い金が支給された場合、社会通念上相当額である場合は課税されません。
- 出産費用は確定申告の際に、医療費控除の対象になります。但し、出産育児一時金は、出産費用から差引かれます。(年末調整では出来ません)
- 出産育児一時金、出産手当金に対する所得税は課税されません。
社会保険事務所
A子供を扶養する場合
実務
出産した子供を従業員の扶養にする場合健康保険被扶養者(異動)届に必要事項を記入し健康保険被保険者証を添付の上所轄の社会保険事務所に提出します。
留意点
被扶養者の資格は生れた日に発生しますが、健康保険被保険者証への記入は届け出を受理されてからになります。届け出が遅れた場合、医療費を自費で支払い、後で療養費支給申請書を提出して請求し、家族療養費の支給を受けることになります。
B出産育児一時金の支給を受ける場合
実務
被保険者や被扶養者である妻が出産した場合、出産(配偶者出産)育児一時金が受けられます。
請求手続は、出産(配偶者出産)育児一時金請求書に、医師・助産婦によるよる分娩証明、または、市町村による出生届出日等の証明を受けて、保険者(社会保険事務所または健康保険組合)に提出します。
留意点
- 出産(配偶者出産)育児一時金の金額は1児につき30万円となっています。
- 健康保険で言う分娩とは妊娠85日(4ヶ月)以後の生産(早産)、死産(流産)、人工妊娠中絶をいいます。
- 被保険者資格を失ってから、6ヶ月以内に出産したときも、被保険者期間が継続して1年以上有れば、支給を受けられます。
C出産手当金
実務
女子被保険者が出産のために仕事を休み給与の支給を受けなかった場合、出産手当金が支給されます。手当金の額は、分娩日以前42日、多産の場合は98日、分娩以後56日までの間で、欠勤1日につき標準報酬日額の60%が支給されます。
手続は出産手当金請求書に欠勤中の給与の支払いに関する、事業主の証明と医師等の意見・証明を受けて保険者に提出します。
留意点
- 欠勤中に給与の一部(出産手当金よりも少ない)の支給を受けられる場合は、出産手当金との差額が支給されます。
- 予定より、出産が遅れた場合、分娩予定日から、実際に分娩した日までの間の期間分も支給されます。
- 出産手当金の支給期間中に傷病手当金も受けられる場合、出産手当金が優先し傷病手当金は支給されません。
D育児休業中の保険料の免除
実務
育児休業法に基づく育児休業を取っている被保険者は、健康保険・厚生年金保険育児休業保険料免除申出書を事業主を通じて、保険者に提出することにより免除を受けられます。
留意点
- 保険料が免除されるのは被保険者分に関してだけで、会社負担分は免除されません。
- 特別保険料は免除の対象になりません。
- 免除期間は、申出書を提出した月から、申出書記載の育児休業終了予定日の翌日の前月までです。(労動基準法の定めるところによる産後休業期間は育児休業に該当しません)
- 保険料の免除を受けた期間について何の不利益もなく、厚生年金保険においても、保険料を収めた期間として取り扱われます
公共職業安定所
育児休業給付の支給を受ける場合
A育児休業基本給付金・育児休業者職場復帰給付金
実務
原則として、育児休業を開始した日以前2年間に、みなし被保険者期間が通産12ヶ月以上ある者が、受給要件を満たしている場合に、育児休業基本給付が受けられます。
事業主は、該当する雇用保険の被保険者が育児休業を開始したときに育児休業の開始した翌日から10日以内に休業開始時賃金月額証明書を管轄公共職業安定所に提出しなければなりません。
留意点
- 受給要件は、
ア:支給単位期間の初日から末日まで、継続して被保険者であること
イ:支給単位期間に育児休業による全日休業日が20日以上ある(日祝等含む)
ウ:支給単位期間内に支給された賃金額が、休業開始時の賃金月額の80%未満であること - 育児休業基本給付金額は休業開始時の賃金日額の30倍の額の20%に相当する額が、育児休業者職場復帰給付金は休業開始時の賃金日額の30倍の額の5%に相当する額が休業期間分支給されます。
- 基本受給金の受給手続は、最初の支給単位期間の初日から4ヶ月以内に職場復帰給付金は休業終了後6ヶ月を経過した日の翌日から2ヶ月以内に申請しなければなりません。
5.従業員が65・60歳になった場合
税務署
実務
65歳になった時点で既に提出してある給与所得者の扶養控除等申告書の老年者のところに丸印を書き加えます。
留意点
その月の給与の源泉所得税から、扶養者1名分を増やした人数で計算し源泉徴収します。
社会保険事務所
A60歳になったとき
実務
特別支給の老齢厚生年金は、その受給権者(原則として25年以上の被保険者期間を有し、そのうち厚生年金の被保険者期間が1年以上あるもの)が退職しないで被保険者である場合に、特別支給の老齢厚生年金が受けられます。
60歳になったら速やかに国民年金・厚生年金保険老齢給付裁定請求書にて裁定請求します。
留意点
- 在職中はまず、2割の年金が支給停止されます。
- 年金月額の8割+標準報酬月額が22万円を超える場合は次のように調整されます。但し、年金額の2割と下表の減じる額の12倍したものが老齢厚生年金額を超える場合は全額支給停止されます。
基本月額 | 標準報酬月額 | 基本月額からされに減じる額 |
---|---|---|
22万円以下 | 34万円以下 | {(標準報酬月額+基本月額)-22万}×1/2 |
22万円以下 | 34万円超 | {(34万+基本月額)-22万}×1/2+(標準報酬月額‐34万) |
22万円以上 | 34万円以下 | 標準報酬月額×1/2 |
22万円以上 | 34万円超 | 34万×1/2+(標準報酬月額‐34万) |
B.65歳になったとき
実務
厚生年金保険の被保険者は65歳未満となっていることから、65歳になったら5日以内に健康保険厚生年金保険被保険者資格喪失届を提出します。
留意点
- 健康保険は資格喪失しませんので注意が必要です。
- 厚生年金の裁定手続は年金受給を受けようというときにします。66歳に達するまでに老齢基礎年金の裁定請求をしなかった場合は、社会保険庁長官に対して支給繰り下げの申し出をすることが出来ます。
公共職業安定所
A.高年齢者雇用継続給付
実務
60歳になった時点で被保険者期間が5年以上あるものが、60歳時の賃金に比較して著しく低下した場合に高年齢者雇用継続基本給付金が支給されます。該当する被保険者を雇用する事業主は60歳到達時賃金月額証明書を提出しなければなりません。
留意点
- 60歳から65歳に達する月までの期間内で被保険者であるときに支払われた賃金が、60歳に達した月をもとに算定される賃金日額の30倍の額の85%に満たないときに支給される。
- 60歳到達時賃金月額に対して、支払われた賃金が64%未満であるときにその25%を、64%以上85%未満のときは25%から一定の割合で低減する率を乗じた金額となります。
- 受給の手続は受給資格確認票を提出した後に雇用保険被保険者60歳到達時賃金月額証明書を作成提出し、受給資格確認通知書の交付を受けてから高年齢雇用継続給付支給申請書を提出します。添付書類は賃金台帳・出勤簿・住民票の写し等が必要になります。
税務署
実務
賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表に従い源泉所得税を徴収します。
留意点
賞与の税額計算は、賞与の額ではなく、前月の給与の額で税率を計算します。
社会保険事務所
実務
賞与等が支払われたときはその都度、支払った日から5日以内に健康保険・厚生年金保険賞与支払い届けにより届け出することになります。
留意点
- 年間に4回以上支給される賞与等は標準報酬月額に換算しますので、この届出は必要ありません。
- 保険料は次の保険料率を賞与額に乗じたものになります。
料率 | 事業主負担 | 従業員負担 | |
---|---|---|---|
厚生年金 | 142.88/1000 | 71.44/1000 | 71.44/1000 |
健康保険 |
公共職業安定所
特に提出する書類はありませんが、通常の賃金に準じて保険料を徴収することになります。
7.給与が大幅に変更になった場合
標準報酬月額の随時改定(月額変更届)
社会保険事務所
実務
昇給等により、被保険者の受ける報酬が大幅(標準報酬月額が2等級以上の変動)に変わったときは、次の定時決定(算定基礎届)を待たずに標準報酬の改定が行われます。
随時改定に該当する人については、被保険者報酬月額変更届により、変動月から3ヶ月間の報酬を届出ます。
留意点
- 随時改定は次の3つの条件にすべて当てはまる人が対象になります。
ア:昇・降給により、固定的賃金に変動があったとき
イ:固定的賃金の変動月以後引き続く3ヶ月間に受けた報酬の平均月額と現在の標準報酬等級との間に2等級以上の差が生じたとき。
ウ:3ヶ月とも支払基礎日数が20日以上あるとき - 3ヶ月の標準報酬月額を算出するときは、固定的賃金だけでなく、超過勤務手当などの非固定的賃金も含めます。
- 固定的賃金
【固定的賃金】
月給・週給・日給役付手当・家族手当・住宅手当・勤務地手等
固定的賃金の額に変更があり、3ヶ月の報酬月額で2等級以上の差が生じれば月額変更届を提出
【非固定的賃金】
超過勤務手当・能率手当・宿直手当・皆勤手当・精勤手当など
非固定的賃金も報酬に含めて計算するが、この変動のみでは随時改定のは行われない - 昇給が溯って発令され、昇給差額が支給された場合単純に3ヶ月の平均を算出すると差額支給分が不当に高くなってしまいます。そこでこうした場合は、差額支給分を除いて算定することになります。
8.算定基礎届
社会保険事務所
実務
毎年
8月1日現在の全ての被保険者について、その月の5・6・7月に支給された報酬の額を届出ます。
実際に計算する場合は、次のような手続によります。
- 対象月のうち、報酬の支払いの基礎になる日数が20日未満の月があれば、その月は計算の対象から除く。
- 被保険者に支払われた報酬のうち、現物で支給されたものは、標準価格などにより、金銭に換算し計算します。
- 対象となる月の報酬の総額を計算し、その月数で割ります。
留意点
- 7月1日以降に被保険者になった者、8月に標準報酬の随時改定が行われる者は対象外になります。
- 届出用紙は社会保険事務所から既にデータの印字された用紙が届きますので必要事項を記入して提出することになります。
- 算定基礎届の用紙と一緒に総括表が配布されますので、必要事項を記入し提出します。
- 昇給差額を支給された場合など通常の方法で算定できないときは差額を差引いて修正平均を出します。しかしながら、支払基礎日数が20日未満という場合や、休職により定額であった等という場合は、10月以降の報酬額を推定できないことから従前の標準報酬額をそのまま用いることになります。
- 決定通知書が届いたら、その報酬をもとに保険料や保険給付の額が計算されることになります。
9.従業員に各種変更(氏名・住所・扶養者)があった場合
税務署
実務
氏名・住所・扶養者に変更があった場合に既に提出してある、給与所得者の扶養控除(異動)申告書を補正するか新たに提出します。
留意点
扶養者に変更があった場合は、給与の源泉徴収税を見直すことになります。
社会保険事務所
A.氏名の変更があった場合
実務
結婚や離婚で氏名に変更があった場合は、健康保険・厚生年金保険被保険者氏名変更(訂正)届けに必要事項を記入の上、健康保険被保険者証・年金手帳(基礎年金番号通知書)を添えて提出します。
B.住所の変更があった場合
実務
引越しなどで、住所が変更になったときに厚生年金保険被保険者住所変更届けに必要事項を記入し年金手帳(基礎年金番号通知書)を添えて提出します。
C.被扶養者の変更があった場合
実務
健康保険の被扶養者に変更があったときに健康保険被扶養者(異動)届けに、必要事項を記入し健康保険被保険者証を添えて提出します。
被扶養者とは、一定の親族で、被保険者により生計を維持している者をいいます。
16歳から60歳までの者(同居の妻を除く)を被扶養者として届出る場合は、その者が被保険者によって生計を維持されていることを証明できる、住民税の非課税証明書・在学証明書等を添付します。
留意点
- 扶養親族の範囲は次のようになっております。
ア:主として被保険者によって生計を維持している次の者(同居要件なし)- 被保険者の直系尊属(父母・祖父母など)
- 被保険者の配偶者(内縁の配偶者も含む)
- 被保険者の子(養子も含むが里親里子は含まず)
- 被保険者の孫
- 被保険者の弟妹
- 被保険者の上記以外の3親等内の親族
(兄姉・叔父叔母・甥姪・子の配偶者・孫の配偶者・配偶者の父母連れ子等) - 被保険者と内縁関係にある配偶者の父母及び子
- 被保険者と内縁関係にある配偶者の死亡後における父母及び子
- 生計を維持する者とは以下の要件になる
同一の世帯に属し年間収入が130万円未満であり、被保険者の年間収入の2分の1未満の者
60 歳以上または障害厚生年金の受給要件に該当する場合は180万円未満でありか被保険者の年間収入の2分の1未満の者。
被保険者と同一の世帯に属していない場合で、年間収入が130万円未満(60歳以上障害の者は180万円)であり、かつ被保険者からの援助による収入額より少ない場合には被扶養者に該当します。 - 被扶養者が被保険者と遠く離れて住んでいる場合は遠隔地被保険者証交付申請書に必要事項を記入し申請することにより、被扶養者用にもう一枚被保険者証が発行されます。
10.労働保険の申告
労働基準監督署
実務
労働保険料は、保険年度ごとに1年分まとめて納付することになります。
この場合の1年とは、保険年度でいう4月1日から3月31日までのもので、総額賃金を概算して保険料率を乗じて保険料を算出して、会社が前払いという形で納付しておきます。
その後、保険年度が終わってから、確定保険料を算定して、概算保険料と精算する形を取ります。
翌年度の概算保険料は賃金総額の見込み額が前年と比較して2倍以上または2分の1以下にならない限り前年度の確定保険料と同額になります。
留意点
- 確定賃金総額とは、賃金・手当・賞与・その他名称の如何を問わず、労働の対象として支払うもので、源泉税・社会保険料等を控除する前の支払総額をいいます。
- 前年の4月から3月分までを集計することになりますが、パート・アルバイト等で、雇用保険の対象にならない者がいる場合は、労災保険と雇用保険に分けて集計する必要があります。
- 概算保険料が40万円以上の場合は3回に分割納付が出来ます。
- 年度終了時の精算で、概算保険料が多ければ、次年度分の概算保険料分に組込む事になります。
一方、概算保険料が少なかった場合には、次年度分の概算保険料に不足分を加えて納付する事になります。 - 概算・確定の保険料の申告の時期はあたらしい保険年度が始まってから50日以内になっております。
11.従業員が死亡した場合
税務署
実務
退職手当金等受給者別支払調書・合計表を支払日の翌月の15日迄に、提出します。
この時に、所得税は課税されず、源泉徴収する必要はありません。
100万円以下の者については、支払調書を提出する必要はありませんが、合計表には含めて記載しなければなりません。
留意点
- 弔慰金を支払った場合
社会通念上相当額である場合は、課税されません。 - 年末調整
死亡した時点で、年末調整を行い、還付又は不足額を調整します。
年末調整を終了後遺族に対して、給与所得の源泉徴収票を作成して交付します。 - 従業員に保険を掛けていた場合
ア:死亡保険金が会社の場合
受け取った保険金はその年の益金になり、支払った退職給与は損金になります。また、保険金の積立て部分があるときは、その積立て部分も損金になります。
イ:死亡保険金の受取人が遺族の場合
保険料の積立て部分はその年の損金になります。
市町村役場
特別徴収している場合に、給与支払報告、特別徴収に係る給与所得者異動届出書を速やかに提出します。